ステンレスのロウ付けの強度は低い?接合方法の違いや注意点を解説

ステンレスのロウ付けの強度は溶接よりは低い

ステンレスのロウ付けは、接合の仕組みが溶接と異なるため、一般的に強度は溶接よりも低くなる傾向があります。ロウ付けは、母材よりも融点の低いロウ材を溶かし、部材間のすきまに流し込んで接合する金属加工技術です。ロウ材の強度は母材よりも低いことが多く、一般的に接合部の強度は母材に比べて劣ります。

一方、溶接は二つ以上の金属の接合部分を加熱して溶かし、その後冷却することで一体化する方法です。溶接は母材同士が直接くっついているため、適切な条件でおこなえば母材と同等、またはそれに近い強度での接合が可能です。

このように高強度の接合が必要な場合は溶接が適していますが、ステンレスの溶接には酸化防止や歪み対策などの高度な技術と設備が求められます。また、ロウ付けは、溶接に比べて加熱温度が低く、母材への熱影響を抑えて接合できるというメリットがあります。

それぞれの接合方法の特性を理解し、用途に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。

ステンレスのロウ付けの強度ははんだ付けよりは高い

ステンレスのロウ付けの強度は溶接よりも劣る一方で、はんだ付けよりは優れています。

はんだ付けは、はんだと呼ばれる接着剤の役割を果たす金属を部材の接合箇所に塗り、部材同士をくっつける技術です。表面に塗った金属の強度が上限となるため、はんだの機械的強度が接合強度に影響します。

はんだ付けで使用されるはんだは、スズと鉛を主成分とする合金です。種類によっても異なるものの、銀や銅などを主成分とする溶加材よりもはんだは強度が劣っているため、ロウ付けよりもはんだ付けの強度は低いといえます。

高い強度が必要なステンレス部品の接合には、はんだ付けではなくロウ付けや溶接を検討しましょう。

ステンレスのロウ付けの強度に関するポイント

ロウ付けは母材の変形や歪みを抑えやすいというメリットがある一方で、使用する溶加材、ステンレスの母材の表面処理、加熱条件などによって強度が大きく左右されます。適切なロウ付けや前後の処理をおこなえば、荷重がかかる部材にも十分に使用可能な強度を得られるでしょう。

ステンレスへのロウ付けの強度を最大限に引き出すためには、母材と溶加材の相性、接合面の設計など、複数の要因を精密に制御する必要があります。

高い技術と豊富な知識が求められるため、外部へ加工を依頼する際はステンレスのロウ付け加工を得意としているか、過去の製作実績を確認することも大切です。
以下では、ステンレスのロウ付けにおいて強度を確保するために押さえておくべき、重要なポイントを二点紹介します。

ロウ付けは母材の変形や歪みを抑えやすい

ロウ付けは、ステンレスの接合において母材を溶かさず、溶加材だけを溶かして接合する方法です。加熱温度は450〜800℃程度で、より高温の加熱が必要な溶接と比べて熱の影響が小さくなります。

金属は加熱と冷却によって膨張と収縮を繰り返しますが、温度差が大きくなると変形や歪みが生じやすくなります。ロウ付けは加熱範囲が狭く、母材全体への影響を抑えやすいため、形状の精度を保ったまま接合することが可能です。

母材の形状が保たれていれば、溶加材も設計通りの隙間に適切に流れ込みやすくなります。その結果、接合部の密着性が高まり、接合の強度や耐久性の安定につながります。

異種金属とのロウ付けには高い技術が必要

ステンレスと異なる金属をロウ付けする際には、接合部の強度を安定させるために、接合条件を厳密に制御しなければなりません。

ステンレスと他の金属では、熱膨張係数や融点、酸化しやすさなどの特性が異なります。これらの違いによって、加熱中に片方の金属が先に変形したり、溶加材が均一に流れなかったりすることがあります。その結果、接合部分に隙間ができる、溶加材が密着しないといった不具合が生じ、接合強度が不安定になってしまうかもしれません。

異種金属同士のロウ付けで安定した接合強度を得るには、溶加材の選定、温度管理、母材表面の処理といった工程すべてに高度な判断と技術が求められます。
接合部の強度を確保するには、各金属特性を熟知し、技術力の高い加工会社に相談することも大切です。

小池製作所は、金属加工に携わり続けて60年以上の実績がある加工会社です。ステンレスのロウ付けのように高い技術力が求められる加工でも、経験豊富な社員が対応いたします。
ステンレスの加工に関するお悩みは、小池製作所へお聞かせください。

ステンレスのロウ付けの強度を左右する注意点

ステンレスのロウ付けの強度を左右する要素として、以下のポイントに注意する必要があります。

  • 溶加材の選定
  • 接合部の設計・形状

母材の材質や用途に応じて適切な溶加材を選ばなければ、溶加材が接合部で均一に広がらず、十分な強度で接合できない可能性が高まります。ステンレスにはさまざまな種類があり、溶加材も種類によって特性が異なるため、ロウ付けに関する深い知識が必要です。

また、強度を高めるためには接合部の設計や形状を工夫することも大切です。ロウ付けしやすいよう製品の設計や形状を工夫し、より強度の高いロウ付けができるようにしていきましょう。

適切なロウ材の選定

ステンレスのロウ付けにおいて、母材の種類と使用目的に応じた適切なロウ材の選定は、接合強度に大きな影響を及ぼします。
ステンレスはオーステナイト系、マルテンサイト系などに分類され、それぞれ物理的・化学的性質が異なります。

たとえば、オーステナイト系ステンレスは耐食性に優れる反面、加熱によってその耐食性が低下する場合があるため、接合後の腐食リスクを抑えるには耐食性の高い溶加材の使用がおすすめです。
マルテンサイト系ステンレスは高温で硬化しやすく、割れや変形の原因になってしまうため、高温加熱を避ける必要があり、比較的低温でロウ付けが可能な溶加材が用いられます。

このように、ステンレスの種類や使用環境に対して適切な溶加材を選ぶことが、ロウ付けの強度を確保するためには大切です。

接合部の設計・形状の工夫

ステンレスのロウ付けで高い強度を確保するには、溶加材の選定や加熱条件だけでなく、接合部の設計や形状についても慎重な検討が必要です。

たとえば、接合部に必要以上の隙間があったり、隙間が狭すぎたりすると、ロウ材が十分に行きわたらず、局所的に接着不足や空隙が生じてしまう可能性があります。
設計や形状の工夫の一つとして、接合部に微細な溝加工を施し、毛細管現象によりロウ材を均一に流れやすくし、接合品質を向上させる方法などがあります。

また、設計段階でロウの流動経路や熱の伝わり方を考慮しておけば、溶加材が適切な箇所に確実に届き、十分な接着面を確保しやすくなるでしょう。これにより、接合部の強度のばらつきが生じにくくなり、製品の品質も安定します。

溶加材の選定だけでなく、接合部の構造設計にも十分な配慮を加えることで、ステンレス製部品における高強度なロウ付けが実現します。

ステンレス ロウ付け 強度 小池製作所の様子

高強度なステンレスの溶接は小池製作所にお任せください

ステンレスのロウ付けは高い強度が期待できる一方で、加工には高い技術が必要で、ロウ材の選定や接合部の設計、形状などにも気を付ける必要があります。

外部に加工を依頼する際は、ステンレスのロウ付けの実績が多数ある加工会社に相談することも意識しましょう。

小池製作所には、ロウ付けの加工実績が多数あり、ステンレスのように難易度が高いロウ付けにも対応できる社員が在籍しています。高精度な加工が求められる製品や複雑な形状の製品の接合にも、柔軟な対応が可能です。
他社にロウ付けの加工を断られてしまった、最適な加工方法がわからないなどのお悩みは、以下のフォームよりお気軽にご相談ください。

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