チタンのろう付けについて解説!作業手順や接合が難しい理由を紹介

イメージ画像(この画像はアルミのロウ付け品です)
チタンをろう付けする実際の手順
チタンのろう付けは、前処理・ろう付け・仕上げという3つの工程に分けられます。チタンは高温時に酸素と反応しやすく、加熱によって強固な酸化皮膜を形成するため、一般的な金属よりも厳密な工程管理が必要です。いずれかの条件が適切でないと、ろう材の濡れ性や接合の強度に影響が生じかねません。
チタンならではの特性を理解し、各工程で押さえるべきポイントを把握しておくことが、安定した品質につながります。ここからは、チタンのろう付けで実際に行われる工程を、目的や注意点とあわせて確認しましょう。
前処理
前処理はろう付けの仕上がりを左右する重要な工程であり、脱脂・研磨・洗浄の3段階で構成されます。
最初に行う脱脂は、アセトンやメタノールといった溶剤を用いてチタン表面の油脂や指紋などを取り除く作業です。
研磨の工程では、サンドペーパーや研磨布などを用いて、物理的に酸化皮膜を取り除きます。その後、溶剤洗浄や超音波洗浄などによって、研磨で発生した粉末や残渣を洗い流せば、前処理は完了です。
前処理直後のチタンは表面が酸化しやすい状態にあるため、空気中に長時間さらされると再び酸化皮膜が形成されてしまう点に注意しましょう。チタンのろう付けでは、前処理後できるだけ速やかに次の工程へ移行することが大切です。
ろう付け
ろう付け工程は、位置決め・雰囲気調整・加熱の3つに分けられます。
まず位置決めでは、母材同士の隙間を一定に保ち、毛細管現象によってろうが流れ込みやすい状態で固定することが重要です。
続く雰囲気調整では、真空や高純度アルゴンなどを用いて酸化を防ぎながら加熱できる環境を整えます。
加熱時は、高温での加熱時間を長くしすぎないことがポイントです。チタンは高温によって性質が変化しやすく、接合部にもろい層ができやすいため、加熱時間が長いほどろう付けの仕上がりに悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、温度と加熱時間の両方を適切に管理しながらろう付けを行うことが大切です。
仕上げ
仕上げ工程は、冷却と研磨に分けられ、ろう付け後の状態を安定させるために重要な工程といえます。
冷却の際はゆっくりと温度を下げ、急冷を避けることが基本です。急激に温度を下げると、チタンに温度差による負荷がかかり、割れの原因になる可能性があります。
一方で、高温状態が長く続くと、チタンとろう材の間にもろい層が形成されやすくなるため、冷却速度とのバランスをとることが大切です。
冷却後の研磨では、接合部分の周囲に生じた変色や、はみ出したろう材を取り除き、必要に応じてやすりやバフなどで表面を整えます。
また、炉から取り出すタイミングにも注意が必要です。高温の状態で空気中にさらされると、チタンの表面に酸化や変色が生じる可能性があるため、十分に温度が下がってから取り出しましょう。

チタンのろう付けに必要な設備と道具
チタンのろう付けに必要な設備や道具を工程ごとに解説します。
【前処理】
- 脱脂剤(アセトンなど):表面の油分や汚れを除去する
- サンドペーパー(#400~#800程度):酸化皮膜や汚れを除去し、表面を整える
- 研磨布:表面を磨いて滑らかに整える
- ウエス:溶剤や汚れを拭き取る
- 手袋:皮脂による再汚染を防ぐ
【ろう付け】
- 活性ろう材:酸化皮膜に対応し、ろう付けしやすくする
- 中間材:異種金属間の反応を抑える
- 真空炉またはアルゴン雰囲気装置:酸化を防ぎながら加熱する
- 加熱装置:ろう材を溶融させる
- 固定治具:部材を固定して位置のずれを防ぐ
【仕上げ】
- 研磨工具(やすり、バフなど):余分なろう材や、変色した部分を除去する
- 検査器具:接合の状態や不良の有無を確認する
チタンのろう付けは、前処理から加熱環境、仕上げまでの各工程を適切に管理することが大切です。安定した仕上がりのためには、適切な設備と道具を選ぶことも重要です。
ろう付けの品質を上げるために知っておきたいチタンの特性
チタンのろう付けが難しいといわれる理由はひとつではありません。加熱によって生じる強固な酸化皮膜、ろう材が広がりにくい濡れ性の低さ、そして他の金属と反応してもろい金属化合物を形成しやすい性質など、複数のチタン特有の性質が重なり合い、接合の難易度を高めています。
これらの特性は単独でもろう付けの仕上がりに影響しますが、互いに関連しているため、ひとつの工程だけで対応しようとしても十分な効果が得られません。それぞれの特性を理解したうえで、適切な対策を組み合わせることが、安定したチタンのろう付けにつながります。
ここからは、チタンのろう付けが難しいとされる主な理由と、現場での対処法を見てみましょう。
チタンは加熱すると強固な酸化皮膜が生成される
チタンは活性金属に分類されており、高温になると酸素と反応しやすい性質をもつため、加熱中に表面へ強固な酸化皮膜が形成されるのが特徴です。この酸化皮膜がろう材の濡れ広がりを妨げ、チタンのろう付けを難しくする大きな要因のひとつとなっています。
この酸化皮膜は非常に安定しており、通常のろう付けで使用されるフラックスでは除去できません。また、フラックス自体が高温でチタンと反応し、汚染の原因となる場合もあります。
そのため、チタンのろう付けでは酸素や水分をできるだけ遮断した状態で加熱することが重要なポイントです。具体的には、真空ろう付けや高純度アルゴンなどを用いた不活性雰囲気下でのろう付けが行われます。あわせて、前処理で酸化皮膜や汚れを除去しておくことで、安定したろう付けが可能です。
チタンの濡れ性の低さは不良の原因になりやすい
チタンは濡れ性が低い金属で、ろう付けの際にろう材が均一に広がりにくく、不良の原因になりやすい点が課題です。
濡れ性の低さには、表面の酸化皮膜の影響と、チタン自体が化学的に安定しており反応しにくい性質の2つが関係しています。酸化皮膜が存在すると、ろう材が母材表面になじみにくくなり、滑らかに広がらなくなるのです。
その結果、継手内部に未充填部分や気泡が残りやすくなり、接合面積の不足から強度や気密性の低下につながる可能性があります。対策として、表面の研磨や脱脂、酸洗いなどによる前処理で酸化皮膜を除去し、さらに真空や不活性雰囲気で酸化を防ぐことなどが大切です。
また、チタンを含む活性ろう材を使用すれば、酸化皮膜と反応しながら濡れ広がりを改善できます。
チタンは他の金属と反応して金属間化合物を生成する
チタンは鉄やニッケル、銅といった金属と反応しやすく、接合部分にもろい金属間化合物の層を形成する性質をもちます。この性質はチタンのろう付けにおいて、強度の低下や割れを引き起こす要因のひとつです。
さらに、高温状態が長く続くほどこれらの反応が進み、接合部がもろくなるため注意しなければなりません。対策としては、ニッケルや銅のめっき層や箔材などを中間層として用いる方法が有効です。例えばステンレス鋼との接合ではニッケルめっきを施すことで、チタンとの反応を抑制できます。
また、加熱時間をできるだけ短く管理することや、チタンに適した活性ろう材を選定することも大切です。これらの対策を組み合わせることで、金属間化合物の生成を抑え、安定したろう付けが可能になります。

チタンのろう付けは小池製作所へご依頼ください
チタンのろう付けは、酸化皮膜の形成や濡れ性の低さ、金属間反応などの影響により、一般的なろう付けと比べても難易度の高い接合技術です。そのため、材料特性を十分に理解したうえで、最適な設備や工程、材料を選定する必要があります。
小池製作所では、チタンをはじめとする難易度の高いろう付けについても、豊富な知識と現場経験に基づいた専門技術で対応しています。
試作から量産まで幅広く対応可能ですので、チタンのろう付けや難易度の高い金属接合でお困りの際は、ぜひ一度小池製作所へご相談ください。
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