タングステンのロウ付け方法を紹介!接合の品質を上げるポイントを解説

タングステンのロウ付けが難しい理由とロウ付けの特徴
タングステンのロウ付けは、一般的な金属の接合と比べて難易度が高い工法です。
ロウ付けが難しい主な理由として、加熱時に表面に酸化タングステンが生成され、強固な酸化膜を形成する点が挙げられます。
この酸化膜は化学的に非常に安定しており、高温でも分解されにくく、多くの場合、一般的なフラックスでは十分に除去できません。そのため酸化膜が母材表面を覆ったままとなり、ロウ材が母材に直接接触しにくくなります。
さらに、タングステンは濡れ性が低く、溶融したロウ材が接合面に広がりにくいです。その結果、ロウ材が均一に行き渡らず、十分な接合強度を得ることが難しくなります。
このような特性をもつタングステンのロウ付けでは、接合性を確保するためにいくつかの工夫が必要です。ここでは代表的なポイントについて、詳しく解説します。
ニッケルめっきを施して濡れ性を上げる
タングステンはロウ材が広がりにくい性質をもつため、そのままでは接合が不安定になりやすい材料です。タングステンのロウ付けでは、濡れ性を改善するために、前処理としてニッケルめっきを施し中間層を形成する方法が用いられることが多いです。
ニッケルはタングステンおよび銀ロウとの相性が良く、接合時に反応しやすい金属であるため、表面に層を形成することでロウ材が母材になじみやすくなります。その結果、ロウ材の広がりが安定し、接合部全体に均一に行き渡りやすくなります。
還元雰囲気や真空状態の環境で酸化を防ぐ
タングステンのロウ付けでは、真空や還元雰囲気など、酸素の影響を受けにくい環境で加熱する必要があります。
タングステンは高温になると酸化しやすく、表面に酸化タングステンが形成されます。この酸化膜は高温でも分解されにくく、一般的なフラックスとも反応しにくいため、除去が困難です。また、母材表面を覆うことでロウ材の濡れ性を大きく低下させます。
真空や還元雰囲気で加熱すれば酸化を抑制でき、ロウ材の濡れ性の低下を防ぐことも可能です。
高温でのロウ付けになることが多い
タングステンのロウ付けはおもに、一般的な銀ロウ付け(約600〜900℃)よりも高温でおこなわれます。タングステンは融点が非常に高く、ロウ材との反応やなじみが起こりにくいため、十分に濡れ広がらせるには比較的高い温度が求められるためです。
またタングステンは加熱時に熱が周囲へ逃げやすく、局所的な加熱では温度が均一になりにくい性質があります。そのためロウ付けでは、真空炉や高温炉といった、部材全体を均一に加熱できる設備が必要です。
小池製作所では、難易度の高いロウ付けにも対応しております。ロウ付け前後の処理なども、素材や製品の特性を考慮した提案が可能です。異種金属のロウ付けなどの依頼先にお悩みの事業者様は、ぜひ弊社にご連絡ください。

タングステンのロウ付け手順
タングステンのロウ付けは、基本的な工程自体は一般的なロウ付けと同様ですが、タングステンの特性を踏まえた管理が求められます。とくに、前処理や加熱時の環境を適切に管理することが大切です。
タングステンは濡れ性が低く酸化しやすい金属であるため、前処理が不十分だとロウ材が接合面に十分に濡れ広がりにくくなります。また加熱中に酸化が進むと、濡れ性がさらに低下し、不良の原因となるのです。
ここからは、タングステンのロウ付けにおける具体的な作業手順について解説します。
脱脂・研磨・ニッケルめっきなどの前処理
タングステンのロウ付けでは、接合前の前処理が非常に重要です。まず脱脂処理によって表面の油分や汚れを取り除き、接合面を清浄な状態にします。これは、ロウ材の濡れ広がりを妨げないために必要な工程です。
次に研磨によって酸化膜や表面の不純物を除去し、ロウ材が接合面に広がりやすい状態を整えます。さらに、タングステンは一般的な酸では酸化物の除去効果が限定的なため、必要に応じて化学エッチングなどの専門的な処理が必要です。
また、濡れ性を改善する方法として、ニッケルめっきを施して中間層を形成することもあります。こうした前処理を丁寧におこない、表面状態を適切に整えることで、ロウ材の濡れ広がりが安定し、接合の品質が向上します。
酸化を防ぐ環境での加熱・ロウ付け
前処理のあとは、接合する部材を所定の位置に固定し、ロウ材を配置して加熱します。タングステンは酸化しやすいため、加熱は酸素の少ない真空炉や還元雰囲気炉でおこなうことが一般的です。
酸素の影響が少ない環境で加熱をおこなうことで、酸化タングステンの形成が抑えられ、濡れ性が維持されます。
また、加熱中はロウ材が十分に広がっているかを確認しながら作業を進めることが重要です。適切な加熱条件と温度管理が、品質を左右するといえます。
ロウ付けの品質を決定づける冷却・仕上げ
タングステンのロウ付けでは、加熱後の冷却の工程においても特有の注意が必要です。ロウ材が接合部へ行き渡った後は、急激な温度変化を避け、ゆっくり冷却しましょう。タングステンは高融点かつ熱伝導率が高いため、急激な温度変化を与えると、接合部にひずみが生じ、微小な亀裂が発生する可能性があります。
冷却後は、フラックスを使用していた場合には残渣を取り除き、表面の酸化膜や汚れを除去します。適切な方法で冷却や仕上げ処理をおこなうことは、仕上がりの品質と耐久性を確保するうえて大切です。
タングステンのロウ付けに必要な道具一覧
タングステンのロウ付けに必要な道具を紹介します。
- 加熱装置
電気炉や真空炉を使用して、真空や還元雰囲気のもと、酸化を抑えながら全体を均一に加熱する方法が一般的です。なお局所的な加熱や簡易な作業にはガストーチ、短時間で効率良く加熱するには高周波装置が用いられることもあります。
- ロウ材
タングステンのロウ付けでは銀ロウが用いられるのが主流です。母材となじみやすいニッケルを含有した銀ロウが選ばれる場合もあり、より強度が必要な場合は銅ロウが使用されます。
- フラックス
タングステンのロウ付けでは専用のフラックスが用いられることがありますが、加熱方法によってはフラックスを使用しない場合もあります。
- 前処理・後処理用の工具
サンドペーパーやブラシ、脱脂用溶剤などを用いて、酸化膜や汚れ、フラックス残渣を除去します。
- めっき処理設備
ニッケルめっき装置を用い、タングステンの表面に薄いニッケル層を形成することで中間層を作ります。
- 温度測定・管理設備
熱電対や赤外線温度計などで、加熱中の温度を正確に把握・制御します。
- 固定治具
耐熱性を備えた治具やクランプで、部材を所定の位置にしっかりと固定します。

タングステンのロウ付けは小池製作所にご相談ください
タングステンのロウ付けは、その特性から難易度が高く、専門的な知識や技術に加えて専用の設備が求められます。安定した品質を確保するためには、経験に裏付けられたノウハウが欠かせません。
小池製作所では、タングステンをはじめとする難易度の高いロウ付けや異種金属の接合にも対応しており、さまざまなご要望に応じた施工が可能です。他社で対応が難しいとされた場合も、まずはご相談ください。施工の内容やご予算、ロット数に応じて最適な工法をご提案いたします。
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